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Cfo大学:新・収益認識基準(経理じゃない人向け) | 新 収益 認識 基準 わかり やすく Câu Trả Lời Chi Tiết Nhất

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経理 https://youtu.be/a_4J1TQs02g
簿記 https://youtu.be/qnYmxsXJSr4
税務と会計   https://youtu.be/LmA50UXw0xk
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黒字倒産 https://youtu.be/qBXBU-7BLBI
税務調査 https://youtu.be/II0xJZY7CJ4
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貸借対照表(入門編) https://youtu.be/ioDCXWaXayM
繰延税金資産(入門編) https://youtu.be/A27uX6r-Oho
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ライツオファリング① https://youtu.be/DWnRaCByoQ4
ライツオファリング② https://youtu.be/wB0CTK4FsYU
ライツオファリング③ https://youtu.be/YaJiSuR5RLA
若手研修実践編 財務諸表の見方01 https://youtu.be/F406I-SdkYA
若手研修実践編 財務諸表の見方02 https://youtu.be/70XFxacfXl4
若手研修実践編01 名刺交換 https://youtu.be/D3SmXaecib4
若手研修実践編02 自己紹介の作り方 https://youtu.be/jSl0S6EC5fQ
若手研修実践編03 発言力(後編) https://youtu.be/aj_Rhmaw4bE
若手研修実践編03 発言力(前編) https://youtu.be/6_Uko9YsIos
若手研修実践編04 発言力② 副業(後編) https://youtu.be/7yehAr78Kb0
若手研修実践編04 発言力② 副業(前編) https://youtu.be/AQkVT_jPFVw
若手研修第1回「ハードワーク」 https://youtu.be/hxtSANAIXQg
若手研修第2回 https://youtu.be/pFnGPP9gd8s
若手研修第3回 https://youtu.be/M6A7Pq9WAjA
若手研修第4回 https://youtu.be/hT8HhIY3Eig
若手研修第5回 https://youtu.be/bFz15AMMGDA
若手研修第6回 https://youtu.be/aG6yTxFScT8
若手研修第7回 https://youtu.be/mzsK_hch96w
若手研修第8回 https://youtu.be/ZlkUZoRjYzE
若手研修編 やり切る  https://youtu.be/2hc7_JJ9ntU
若手研修編 引継ぎ   https://youtu.be/jnYh4fxoJoA
分かりやすい論理的思考 https://youtu.be/5yDRzLZDE_M
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自己紹介の深掘り② https://youtu.be/Sl38R5kJZQU
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自己紹介の深掘り④ https://youtu.be/5JPHBt1so2M
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自己紹介の深掘り⑥ https://youtu.be/nYdobfOA4J0
自己紹介の深掘り⑦ https://youtu.be/yubXgPZc2JA
自己紹介の深掘り⑧ https://youtu.be/l5SQiOILtO0
コミュニケーション能力 入門編 https://youtu.be/D7kbPLLDgxo
コミュニケーション能力001 https://youtu.be/BznDhwcHWow
コミュ力003 https://youtu.be/FC33wS0O_mc
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CFO大学:新・収益認識基準(経理じゃない人向け)
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収益認識基準 何のため?

収益認識基準は、正確な財務状況を記録するためのものです。 売上計上のタイミングがバラバラだと、同じだけ働いているのにある月は売上高が多く、ある月は少なく計上されるなどの問題が発生してしまいます。 財務状況を正確に把握するため基準が必要だといえます。

新収益認識基準の対象会社は?

まず、収益認識基準は2021年4月以降に開始する事業年度から公認会計士の会計監査を受ける会社、つまり会社法上の大会社(資本金5億円以上または負債200億円以上の会社)や上場会社対象にして適用されます。

収益認識基準 いつから?

収益認識に関する会計基準」は平成30年3月に導入されたものであり、平成33年4月以後開始事業年度において本格的に適用されるものであるため、様々な業種や業態における私法上の取引に応じた会計処理については、今後明らかになってくるものと考えられます。

新収益認識基準のステップは?

新たな収益認識基準では、5つのステップ(①契約の識別、②履行義務の識別、③取引価格の算定、④取引価格の配分、⑤収益認識)に沿って売上を計上する。

収益認識基準 なぜ導入?

なぜ収益認識基準導入されるのか? 売上計上の新ルール「新収益認識基準導入の目的は、今まであいまいだった売上計上(=収益認識)のルールを明確にし、取引の実態に合わせた売上計上を行うようにすることにあります。

予約販売の収益認識基準は?

そこで、企業会計原則注解では、予約販売による売上収益の具体的な実現の基準として、受取予約金のうち、決算日までに商品の引渡または役務の提供が完了した分だけを当期の売上に計上すると定めている(販売基準)。

収益認識の計上時期は?

収益認識に関する会計基準では、契約とその履行義務に着目して、履行義務を充足するタイミングで売上を計上します。

売上計上基準の変更は?

2021年4月から、『新収益認識基準』が適用開始となりました。 『新収益認識基準』とは、売上計上を行うタイミングを定めたもので、このルールが2018年3月に改められ、2021年4月より大企業は強制適用、中小企業は任意適用となっています。

収益認識基準の勘定科目は?

収益認識基準等では、貸借対照表の勘定科目として、「契約資産」、「債権」、「契約負債」について規定されている。

収益認識基準 注記 いつから?

2022年3月期より、「収益認識に関する会計基準」が適用され、初めて有価証券報告書を作成する企業も多いと思います。 四半期報告書では、主に連結損益計算書関連の注記が追加されましたが、有価証券報告書では、四半期報告書の注記に加え、連結貸借対照表関連の注記が追加されます。

新収益認識 いつから?

新収益認識基準とは? 新収益認識基準は売上に関して「どのように認識し、財務諸表上にどのように反映するのか」を定める新しい基準です。 冒頭でも述べましたが、新収益認識基準は2021年4月から始まる会計年度から強制適用になる会社があります。

費用認識のタイミングは?

商品を買った時 発生主義の代表的な経費計上のタイミングは商品を購入したときであり、一般的に検収基準が使われます。 検収基準とは商品を発注したときではなく、正しく納品された事実を確認した時点で費用を計上することです。 つまり費用を支払ったタイミングは関係なく、商品を受け取ったかどうかがポイントになります。

履行義務の例は?

例えば、マンションを設計施工する場合には「設計する」という約束と「施行する」という約束が存在します。 この2つの約束が「履行義務」の内容です。 また、設計業務が設計図を納めて完了する場合は、施工と設計は別々の履行義務となり、設計業務に監理を含むときは施工と一体の履行義務として扱うことになります。

新収益認識基準が2021年から適用!ポイントと影響を解説

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2021年4月から始まる会計年度から一部の企業が強制適用になる新収益認識基準について、皆さんはどのくらい理解されていますか?本記事は新収益認識基準についての概要把握を目的として、「新収益認識基準」というワードを初めて耳にされた方はもちろん、要点だけ押さえておきたいという方向けにもわかりやすく解説しています。本記事を読み終えた頃には、新収益認識基準の概要の理解が進んでいるでしょう。是非、ご自身の業務に関わる箇所だけでも一読いただき、皆さんのお力になれましたら幸いです。

新収益認識基準とは?

新収益認識基準は売上に関して「どのように認識し、財務諸表上にどのように反映するのか」を定める新しい基準です。冒頭でも述べましたが、新収益認識基準は2021年4月から始まる会計年度から強制適用になる会社があります。 「適用対象」となる会社はどういったものがあるのでしょうか。以下、簡潔に要件を列挙します。

会社法(第2条)による会社の分類

大会社 適用対象

大会社以外の会社 任意適用

大会社とは、以下の要件を満たす会社のことを指します。

・最終事業年度に係る貸借対照表に資本金として計上した額が5億円以上

・最終事業年度に係る貸借対照表の負債の部に計上した額の合計額が200億円以上

上場(予定)の有無

上場会社 適用対象 ※子会社・関連会社を含む。

※子会社・関連会社を含む。 上場準備会社 適用対象 ※子会社・関連会社を含む。

※子会社・関連会社を含む。 上場予定のない会社 任意適用

ここまでの話を図にまとめると下記のようになります。

《新収益認識基準の適用対象~早見表~》 上場会社 上場準備会社 上場予定のない会社 大会社 適用対象 適用対象 適用対象 大会社以外の会社 適用対象 適用対象 任意適用

新収益認識基準の適用対象になっている場合、財務諸表に記載する売上収益の金額などに影響があります。そのため、新収益認識基準の適用にあたり影響を受ける範囲は、会社全体になります。 もし上記の早見表上、貴社が新収益認識基準の適用対象となっている場合、具体的に「貴社の業務にどういった影響があるか」確認が必要です。おおまかに以下の手順で対応を進めていきましょう。

自社で発生する取引の整理 発生する取引が、どの程度新収益認識基準の適用要件に該当するかの確認 それぞれの取引に適切な会計処理を検討 2021年4月以降に開始となる会計年度の会計処理に適用

※本記事では、上記手順の1番と2番を中心に扱っています。また、3番に関連する内容も一部記載しますが、詳細の内容については貴社会計士や監査法人とご相談ください。

新収益認識基準が導入される背景

具体的な細かい内容に入る前に、ここで新収益認識基準が導入される背景について整理しておきましょう。 今回の新収益認識基準対応が求められている背景には、IFRS-15の適用があります。「顧客との取引による収益の認識に関する新しい基準」がIFRS-15(IFRS 第15号)です。

新収益認識基準はIFRS-15の考え方を取り入れた会計基準のため、IFRS-15への理解が非常に重要です。 今まで日本の会計基準をもとに収益を計上していた企業は、IFRS-15で定められている新しい収益認識基準で収益の計上を行なう必要があります。

IFRS-15で定められている「収益の認識に関する新しい基準」とは具体的にどのようなステップで考えていくのでしょうか。以下で具体的にみていきましょう。

新収益認識基準のおさえておくべきポイント

今までの収益認識基準は企業ごとに判断が異なることがありましたが、今回IFRS-15の適用によって、収益をどのタイミングでいくら計上するのかを以下の5段階のステップ(過程)に分けて行っていきます。ステップを着実に踏んでいくことで、新収益認識基準に沿った収益認識がなされますので、しっかりと理解されることをおすすめします。

ステップ1 :契約の識別

ステップ2 :履行義務の特定

ステップ3 :取引価格の算定

ステップ4 :履行義務への取引価格への配分

ステップ5 :履行義務の充足による収益の認識

それぞれのステップについて、具体的に細かくみていきましょう。

ステップ1:契約の識別

まずは、顧客との契約を特定します。契約を考える際には、自社のサービスにどういうものがあるかを視点に整理していただくの良いです。契約を交わす事により、売り手側は買い手から対価を受け取る代わりにサービスを提供する義務が生じます。また、買い手は対価を渡すことで売り手からサービスを受ける権利を得ることができます。現在自社にどういった契約が存在するか確認しましょう。

ステップ2:履行義務の特定

次に、履行義務の特定をします。ステップ1で識別した契約を履行義務という観点から、どういったサービスを顧客へ提供していくのか細かく確認します。履行義務とは、売り手の企業にとって「サービスを提供しなければいけない」という契約上の義務のことを指します。たとえば、クラウドシステムを開発・販売しているベンダーであれば、クラウドシステムのライセンスの納品であったり、保守サービスの提供などをそれぞれ履行義務として特定します。

ステップ3:取引価格の算定

取引価格とは、顧客へ約束された商品またはサービスを移転した(提供した)際に、売り手の企業が受け取ると予測している対価の金額のことです。たとえば、月額のライセンスであればその金額、年額のライセンスであればその金額を算定します。また、商品販売時に有効期限つきのポイント付与をするケースも、このタイミングで価格を算定しておくのが良いでしょう。(但し第三者の代理人として回収する金額は、このタイミングでは取引価格からは除外します。)

ステップ4:履行義務への取引価格への配分

顧客へ移転される商品またはサービスが複数存在する場合、ステップ2で特定した履行義務ごとに、ステップ3で算定した取引価格を配分します。履行義務ごとの取引価格として定義がされていないサービスについては、今回を機に検討が必要な箇所になります。

ステップ5:履行義務の充足による収益の認識

いよいよ収益の認識に関するステップです。収益の計上は履行義務の充足によって行われますが、少し分かりにくいので別の表現をしますと、「商品またはサービスを顧客に移転した時点」で履行義務が充足されたとみなし、収益を計上します。たとえば、以下の場合が移転に該当しますので、参考にしていただけると幸いです。

企業が提供したサービスにより、資産に対する支払いを受ける権利を獲得した場合

顧客が提供されたサービスにより、法的な側面から所有権を獲得した場合

提供したサービスが物理的に顧客へ移転した場合

つまり従来は、企業によって「出荷基準」や「検収基準」で収益認識(収益の計上)をしていましたが、今回の新収益認識基準の適用により、履行義務が充足されたタイミングで収益認識を行います。たとえば、クラウド製品の販売を行っている場合、前述の履行義務ごとにサービスの収益認識を行う必要があります。複数のサービスを同時に提供する場合は、履行義務が充足される時点はいつなのか把握しておくと良いです。

クラウド製品のライセンスの場合、従来は初月に一括計上していた収益が今後は月々の計上になります。 また、商品販売時に有効期限つきのポイント付与やクーポンを発行をするケースは、販売時とポイント使用時(クーポン使用時)に分けて考える必要があります。

新収益認識基準の適用により、ポイントやクーポンは商品本体とは分けて、独立した取引とされるため(履行義務の特定)です。 これまでは、ポイント付与やクーポンの有無に関わらず商品価格を収益として計上できましたが、今後は履行義務の特定後、商品本体とポイントやクーポン適用額がそれぞれ独立した履行義務と定義される場合は、商品価格から将来的に適用される金額を差し引いた金額が収益となります。

新収益認識基準への対応

自社に新収益認識基準を適用する際には、大きく以下の段階に分けて進めることをおすすめしています。

現状把握 方針検討(現状の運用フローの見直しや、対応システムの選定など) 実行(変更後のフロー運用開始や、選定システムの導入開始) 運用定着

以下に内容を簡単に記載します。

段階 概要 内容 1 現状把握 現状の業務フローを確認します。「自社にどのような契約があり、それぞれの履行義務を正確に把握」します。また、現状システムを導入されている場合は、システムの仕様上、収益認識の変更に耐えうるのか、あるいは機能追加をしなければいけないのかを検討する必要が出てきます。 2 方法検討 「履行義務の充足」の考え方を主軸として、契約ごとに方針を検討します。顧客視点に立った時に、その契約によって顧客が便益を受け取れると判断が出来れば、その単位で売上計上を適切なタイミングで行なわなければいけません。現状利用しているシステムでの管理が出来なければ、対応するシステム選定も必要になるでしょう。 3 実行 業務フローへの変更が必要であれば、それ相応の人員確保が必要です。システム導入を実行する場合は、ベンダー企業とも協力しながらプロジェクト体制を組み、対応していくのも良いと思います。また、スケジュール管理も必要ですので、段階1でお伝えした「現状把握」で、具体的な対応期日を敷いておきましょう。システム導入に関しては、旧システムとの通常並行稼働期間を設けることが多いため、前もってスケジュール調整を行うことが重要です。 4 運用定着 新しい業務フローが定着、あるいは新しいシステムが本稼働を迎えた後も気を抜けません。月次処理や四半期決算、年次決算を進める中で正しいタイミングで売上計上がなされているか、計上された売上額は正しいか確認が必要です。

まとめ

いかがでしたか。 本記事は、新収益認識基準についての概要把握を目的として、代表的な考え方を述べてきました。「新収益認識基準」というワードを初めて耳にされた方にとって、大枠を掴んでいただくきっかけになれば幸いです。 また、大枠を理解いただいた後は、具体的に自社で適用が必要な契約や取引について把握し、必要に応じて業務フローの見直しやシステム導入が必要になります。是非一度、会計士や監査法人とも相談の上で貴社の新収益認識基準対応を進めていただければと思います。

税理士が解説!「収益認識に関する会計基準(新収益認識基準)」をわかりやすく

税理士が解説!

「収益認識に関する会計基準(新収益認識基準)」をわかりやすく

2021年4月1日以降に開始する事業年度から、「収益認識に関する会計基準」が強制適用されました(中小企業の会計処理については、従来どおり企業会計原則等による会計処理が認められます)。今までは収益認識に関する包括的な会計基準は存在していませんでしたが、国際的な基準と整合性をもたせるため、IFRS(国際会計基準)15号「顧客との契約から生じる収益」を取り入れて日本でも新会計基準を適用することとなりました。(著:東京中央税理士法人 執行役員 竹澤直樹)

1. 収益認識とは 従来日本では、収益認識に関して包括的な会計基準は定められておらず、企業会計原則で「売上高は、実現主義の原則に従い、商品等の販売又は役務の給付によって実現したものに限る」という実現主義の考え方が示されているだけでした。 まずは新収益認識基準が導入される以前の「現金主義」「発生主義」「実現主義」について振り返ります。 現金主義とは 現金の受け取りがなされた時点で収益を認識し、会計処理を行います。記帳が簡易で手間がかかりませんが、期間損益の計算はできなくなります。現金主義は税務上で事業所得や不動産所得が300万円以下の個人事業主が税務署に届出を行った場合のみ認められる方法で、法人では適用できません。 発生主義とは 現金の受け取りではなく、取引が発生した時点で収益・費用を認識し、会計処理を行います。費用の認識は発生(契約や購入)時点で問題ありませんが、収益については取引が発生した時点の認識が難しくなります。売上については、受注・契約・生産・納品・検収・請求・代金の回収と多くの段階があるからです。そこで客観的な基準により収益を認識する必要があるため、次の実現主義の考え方に基づき収益を認識します。 実現主義とは 実現主義では取引の発生だけでなく、取引が実現した時点で収益を認識することになります。取引の実現とは、 ① 外部の第3者に対して、商品の引き渡しやサービスの提供を行っている

② 対価(現金や売掛金)を受け取っている の2つの要件を満たした状態です。

具体的には「出荷基準」「引渡基準」「検収基準」のいずれかを継続的に適用し、収益を認識することになります。 新収益認識基準が導入される背景 今までも実現主義の考え方は示されていたものの、新たに新収益認識基準が導入されることとなりました。それは、実現主義の定めのみでは事業内容が多様化・複雑化した現在においては、収益をいつ認識するべきかを判断することが容易でなくなっていること、そして同じ業界で類似の取引を行っている場合でも、企業間で一貫した収益の認識、表示がなされず、企業間の比較可能性が必ずしも確保されているとは言えなかったからです。また、国際会計基準審議会(IASB)と米国財務基準審議会(FASB)が共同で収益認識に関する包括的な会計基準の開発を行い、新たな会計基準を公表したこともあり、この国際的な会計基準との調和を図ることになりました。

2. 収益認識に関する会計基準(新収益認識基準)とは 新収益認識基準とは、「収益(売上)をいつ、どのように認識し、財務諸表にどうやって反映させるか定めた基準」です。 新収益認識基準の概要 新会計基準では、収益の認識を次の5つのステップによって認識することになります。 ステップ1:顧客との契約を識別 ステップ2:契約における履行義務(収益認識の単位)を識別 ステップ3:取引価格の算定 ステップ4:契約における履行義務に取引価格を配分 ステップ5:履行義務を充足した時に又は充足するにつれて収益を認識 以下の例をもとに、ステップごとに内容を説明します。 【例】 1. A社はB(顧客)に商品の販売とそれに伴う保守サービス(2年間)を提供する契約を締結した

2. 商品は当期首に引き渡し、保守サービスは当期首から翌期末まで提供する

3. 契約書に記載された対価の額は、総額で12,000千円となっている

(出典:国税庁「収益認識に関する会計基準」への対応について) 図にすると、以下のようになります。 ステップ1:顧客との契約を識別 ステップ1と2で売上の単位を特定します。まず収益が生じる対象となる契約を特定し、これが存在することを確認します。 ステップ2:契約における履行義務(収益認識の単位)を識別 契約の中に「商品の販売」と「保守サービス」があるため、それぞれを契約の履行義務として識別します。ここまでで、今回は売上が2つの収益認識の単位に分かれることがわかります。 ステップ3:取引価格の算定 ステップ3で取引価格の算定をし、ステップ4で価格の配分を行います。契約で対価の額が12,000千円となっているため、まず12,000千円が取引価格として算定されます。 ステップ4:契約における履行義務に取引価格を配分 取引価格の配分は、商品の販売と保守サービスの提供がそれぞれ単独で行われた場合の販売価額(独立販売価格)をもとに行われます。今回の例で、商品の独立販売価格を10,000千円、保守サービスを2,000千円とすると、取引価格12,000千円については商品に10,000千円、保守サービスに2,000千円が配分されます。 ステップ5:履行義務を充足した時に収益を認識 ステップ5は収益をいつ認識(収益計上)するかについてです。例では、商品については販売時に履行義務を充足すると認められるため、商品を引き渡した時点で収益を認識します。保守サービスは一定の期間にわたり履行義務を充足すると認められるため、契約期間である2年間で収益を認識します。 適用時期 2021年4月より、大会社等については強制適用となっています。大会社とは、資本金が5億円以上または負債の合計額が200億円以上の会社となります。 適用範囲(適用対象となる会社) 大会社や上場会社(上場準備会社やその関連会社も含む)について適用され、それ以外の会社については任意適用となります。

3. 新会計基準の導入による影響 新会計基準を適用することによって、会計処理の変更が必要となるケースがあります。以下のような取引がある場合には会計処理はもちろんのこと、契約書や社内システムなどの見直しが必要となる可能性があります。 代理人取引 商品の販売やサービスの提供を行った者が「代理人」の場合、収益を総額表示できず、報酬又は手数料の金額(純額)だけを収益として認識します。代理人取引には百貨店の消化仕入や仲介業が該当します。 返品権付きの販売 出版業などでは顧客が商品を売り手に返品して、対価の全額または一部の返金等を求めることがありますが、新会計基準では、以下のような取り扱いになります。 返品されると見込まれる対価を除いて収益を認識

返品されると見込まれる商品について、受け取る対価の額で返品負債(顧客への返金見込額)を認識

顧客から商品を回収する権利として、返品負債の原価分を返品資産として認識 ポイント引当金 サービス提供時に付与されたポイントが顧客にとって重要な権利を提供する場合には、ポイントを履行義務(将来商品と交換する義務)として識別します。そして、将来ポイントが使われる時や期限切れで消滅する時(義務が履行された時)にポイント分の収益を認識します。 出荷基準の取り扱い 今までは「出荷基準」が認められていましたが、出荷時点では支配の移転を伴っていないため、出荷から商品が顧客に届くまでの期間が通常の期間(数日間)でない場合には、出荷基準は使えなくなります。割賦販売にかかる回収期限到来基準(割賦基準)も認められません。 第三者のために回収される金額(消費税等) 消費税は収益の額に含まれないため、税抜方式のみ認められます。 まとめ 新会計基準の導入により上記のような影響が考えられるため、会計処理だけでなく契約書の作り方や業務プロセス、システムの変更など行う必要が出てきます。早めの準備、対応を進めていきましょう。

4. ProActiveの対応状況 ProActiveでは、上記でご紹介した「代理人取引(消化仕入、直送取引による受注見合いの発注)における純額計上」と「返品権付き販売」「独立販売価格に基づく配分」のための決算時調整仕訳計上などにも対応し、「収益認識に関する会計基準」の要件に対応する機能を備えています。

[参考]

関連ページ

【図解】新収益認識基準とは?5ステップをわかりやすく解説

2021年4月より

「収益認識に関する会計基準(新収益認識基準)」の適用が開始されました。

収益認識でキーワードとなるのが「履行義務」です。

この履行義務について具体例を用いて解説し

収益認識基準の主軸となる

「5つのステップ」についても解説していきます。

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新収益認識基準とは?

「新収益認識基準」とは、

2021年4月から新しく適用される

「収益認識に関する会計基準」をいいます。

収益認識基準とは、「売上をどのタイミングでどのように計上するか」についてを定めた基準です。

適用会社

会計監査を受ける上場会社や大会社は強制適用となります。

会計監査を受けない非上場の中小企業は任意となります。

適用時期

2021年4月1日以降に開始する事業年度の期首から強制適用となります。

【3月決算の場合】 →2021年4月より適用 【4月決算の場合】 →2021年5月より適用 【2月決算の場合】 →2022年3月より適用

従来と新収益認識基準の違い

「従来の収益の計上の方法」と「新収益認識基準」で具体的にどう変わるのか?を解説します。

従来の収益の計上について

従来では収益は「実現主義」にもとづき計上しておりました。

「実現主義」とは下記2つの要件を満たしたものになります。

【実現主義の要件】 企業外部の第三者に対する財貨またはサービスの提供 現金または現金等価物の受領

企業外部の第三者に対する財貨またはサービスの提供

顧客へ商品(あるいはサービスなど)を引き渡すこと。 ※「財貨」とは金銭や品物のことをいいます。

現金または現金等価物の受領

現金または現金等価物の受領の 「現金等価物」とは売掛金や受取手形になります。

つまり、商品を引き渡して売掛金が発生するタイミングで計上するということです。

ただし、この実現主義による収益計上する時期は

「出荷基準」「納品基準」「検収基準」とあり、

企業によってどれを適用しているかは異なります。

出荷した時に収益計上する会社もあれば、 納品した時に収益計上する会社もあり、 実現主義による収益は、会社によって計上する時期が異なります。

新収益認識基準

上記に対して「新収益認識会計基準」は

契約の履行義務の充足に応じて収益を認識します。

従来の実現主義の場合、企業によって 「出荷基準」「納品基準」「検収基準」で収益の計上をしているため 企業ごとに収益を計上する時期は異なりました。 しかし、今回の新収益認識基準により、 「履行義務の充足に応じて収益を認識」へ統一されました。

従来→企業ごとで計上時期の基準が異なる 新収益認識基準→統一される

履行義務とは?

【履行義務とは?】 →財又はサービスを顧客に移転する約束することをいいます。 【履行義務の充足とは?】 →その約束を果たすことをいいます。

上記の説明だけではわかりにくいと思うので、下記で具体例を用いて詳しく解説します。

[例1]商品の販売

[例2]保守サービスの提供

を用いて履行義務について解説します。

[例1]商品の販売

顧客へ商品Aを販売したとき 顧客へ商品を引き渡したことで、履行義務は充足されます。 そのため、この一時点で収益を認識します。

さらにもう1つの例を見ていきましょう。

[例2]保守サービスの提供

商品の販売と同時に、その商品の2年間の保守サービスの提供を行うとします。 この場合、保守サービスによる履行義務は 2年間に渡ってサービスを提供するため 一定の期間(2年間)に応じて収益を認識することになります。

保守サービスは、商品の代金に含まれており一括で代金を受け取ることが多いですが、 会計上は保守サービスの期間に応じて収益を計上することになります。

保守サービスを販売した時点で収益を認識するのではなく サービスの提供を受ける期間で収益を認識する。

つまり、「履行義務の充足した時」に収益を認識します。

新収益認識基準の5つのステップ

新収益認識基準では、収益を計上するためには

5つのステップに基づくよう指示されております。

この5つのステップを踏むことで収益計上の

「単位」「金額」「時期」が決定されます。

具体例として下記の例題を元に5ステップについて詳しく解説します。

例題 当社は当期首X1年4月1日に下記2つを1つとした契約を締結し8,000円で販売した。 商品Aの販売

(独立販売価格7,000円)

(独立販売価格7,000円) 2年間の保守サービスの提供

(独立販売価格3,000円) 商品Aは当期首に引き渡し完了しており、保守サービスも当期首から開始されている。 [当期末の収益]および[翌期末の収益]をそれぞれ求めなさい。

ステップ①顧客との契約の識別

今回の例題では、

[商品Aの販売]と[2年間の保守サービスの提供]

で1つの契約となります。

①契約の識別 [商品Aの販売]と[2年間の保守サービスの提供]

これで1つの契約単位になります。

ステップ②契約における履行義務の識別

契約の中で履行義務の識別を行います。

履行義務は下記の2つで識別されます。

②履行義務の識別 [商品Aの販売] [2年間の保守サービスの提供]

ステップ①で契約を識別し、②で契約の中の履行義務の識別を行います。

ステップ③取引価格の算定

例題より取引価格は「8,000円」となります。

③取引価格の算定 取引価格:8,000円

ステップ④履行義務への取引価格の配分

ステップ③の取引価格を履行義務へそれぞれ配分します。

配分方法は独立販売価格の比率に基づきます。

【独立販売価格】とは? 財又はサービスを独立して顧客へ販売する場合の価格のこと つまり、商品および保守サービスを単体で販売した場合の価格となります。

例題より独立販売価格は下記のようになります。

【独立販売価格】 商品A:7,000円 2年間の保守サービス:3,000円

取引価格8,000円から下記のように配分します。

商品A:

8,000×7,000/(7,000+3,000)=5,600

2年間の保守サービス:

8,000×3,000/(7,000+3,000)=2,400

④履行義務への取引価格の配分 商品A: 5,600円

2年間の保守サービス: 2,400円

ステップ③で取引価格を決定し、④で履行義務による配分を行います。

ステップ⑤履行義務の充足による収益の認識

最後にステップ⑤では収益を計上する時期を決定します。

【商品A5,600円】 「商品A5,600円」は販売し 引き渡し完了した時点で収益を認識します。 そのため当期に5,600円の収益が計上されます。

【保守サービス2,400円】 対して「保守サービス2,400円」は2年間にわたり履行義務が充足されるため この2年間で収益を認識します。 そのため、当期首から2年間のため、当期と翌期の収益は下記のようになります。 当期の収益は2,400×12/24ヶ月=1,200

翌期のの収益は2,400×12/24ヶ月=1,200

⑤履行義務の充足による収益の認識 商品A:5,600円

→ 一時点 で認識する

→ で認識する 2年間の保守サービス:2,400円

→ 一定期間 で収益を認識する

ステップ⑤では収益の計上時期を決定します

例題の解答

(解答) 当期の収益:6,800円

翌期の収益:1,200円

(解説)

当期の収益:商品A5,600+当期の保守サービス1,200=6,800円

翌期の収益:翌期の保守サービス1,200円

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まとめ

今回はこの「新収益認識基準」と「5つのステップ」について解説しました。

要点をまとめると下記のようになります。

収益認識基準とは?基本的なポイントや新基準の概要をわかりやすく解説

収益認識に関する会計基準がいよいよ強制適用

「収益認識に関する会計基準」への対応について|国税庁

「収益認識に関する会計基準」への対応について

平成30年3月30日に収益認識に関する包括的な会計基準となる企業会計基準第29号「収益認識に関する会計基準」が公表されました。また、これに伴い平成30年度税制改正において法人税法等の改正が行われました。

1 「収益認識に関する会計基準」への対応についてのパンフレット等

従来、法人の各事業年度の所得の金額の計算上、益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売等に係るその事業年度の収益の額とされ、その収益の額は一般に公正妥当と認められる会計処理の基準に従って計算されるものとされております。この規定を受けて、法人税基本通達等において具体的な収益の計上時期等についての取扱いが定められていたところです。

今般、顧客との契約から生じる収益に関する包括的な会計基準として「収益認識に関する会計基準」が導入され、これを踏まえ平成30年度税制改正において資産の販売等に係る収益に関する規定の改正が行われています。「収益認識に関する会計基準」は、�@「企業会計原則」に優先して適用される会計基準としての位置付けがなされており、�A「履行義務」という新たな概念をベースとして収益の計上単位、計上時期及び計上額を認識する会計処理が行われることとされています。また、法人税法では新たに資産の販売等に係る収益の計上時期及び計上額を明確化する規定が設けられるなどの改正が行われています。

これらを踏まえ、法人税基本通達においては、「収益認識に関する会計基準」における収益の計上単位、計上時期及び計上額について「履行義務」という新たな概念を盛り込んだ形で見直しを行うとともに、法人税法において収益の計上時期及び計上額についての規定が設けられたこと等に伴う取扱いの整理を行っています。

なお、中小企業の会計処理については、従来どおり企業会計原則等による会計処理が認められることとされていますので、今般の通達改正により従来の取扱いが変更されるものではありません。

「収益認識に関する会計基準」は平成30年3月に導入されたものであり、平成33年4月以後開始事業年度において本格的に適用されるものであるため、様々な業種や業態における私法上の取引に応じた会計処理については、今後明らかになってくるものと考えられます。そうした取引に応じた会計処理に関する税務処理について、今後、適宜公表してまいります。

(1) 「収益認識に関する会計基準」への対応について〜法人税関係〜(PDF/1,535KB)

(2) 法人税基本通達等の一部改正について

(3) 収益等の計上に関する改正通達(法人税基本通達第2章第1節部分)の構成及び新旧対応表(PDF/457KB)

2 収益認識基準による場合の取扱いの例

今般の「収益認識に関する会計基準」の導入に伴い、法人税法等の改正が行われたところですが、取引の事例によっては、「収益認識に関する会計基準」に沿って会計処理を行った場合の収益の計上額、法人税における所得金額の計算上益金の額に算入する金額及び消費税における課税資産の譲渡等の対価の額がそれぞれ異なることがありますので注意が必要です。

次の事例は、「収益認識に関する会計基準」に沿って会計処理を行った場合に、会計・法人税・消費税のいずれかの処理が異なることとなる典型的なものとなります。

引き続き、処理が異なることとなる事例について適宜公表してまいります。

※ 消費税は、事業者が行う課税資産の譲渡等の取引を課税対象としており、売り手側の課税資産の譲渡等は、買い手側の課税仕入れとなります。

このため、原則として、法令等に規定する一定の取引や、例えば、資産の譲渡における棚卸資産の引渡しの日について、売り手側は出荷基準、買い手側は検収基準を採用しているなどの場合以外は、売り手側の課税資産の譲渡等に係る対価の額や時期とこれに対応する買い手側の課税仕入れに係る対価の額や時期が異なることにはなりません。

○ 正誤表(平成30年6月5日)(PDF/81KB)

○ 収益認識基準による場合の取扱いの例(PDF/171KB)

現場コンサルタントによる「あるある」コラム|エイアイエムコンサルティング株式会社

2021年4月1日以後に開始する会計または事業年度の期首から適用される新収益認識基準。この新基準はIFRSを基礎に作成されていますので、今までの基準とは全く異なります。従来の会計基準では、「出荷基準」や「検収基準」などといったように、売上を計上するタイミングは企業が自由に選択することができました。しかし、新たな会計基準では、『取引の実態』に合わせて会計処理を行わなければなりませんので、自由に選択することができません。また、『契約資産』、『契約負債』といった管理すべき項目も増えます。

今回は、新基準の概要を説明するとともに、新たに誕生した契約資産・契約負債の内容、いくつか認められている簡便処理についてご紹介します。

目次 新収益認識基準の概要

契約資産と契約負債の管理

重要性に基づく簡便的な処理の容認

新収益認識基準の適用における注意点

まとめ

新収益認識基準の概要

新しい収益認識基準を理解するには、売上を計上するまでの『5つのステップ』を押さえておく必要があります。では、5つのステップとはどのようなものか見てみましょう。

ステップ1: 契約の識別

顧客と合意した『契約』を確認します。ここで言う契約とは、書面だけでなく、口頭での約束や、取引慣行なども含まれます。

ステップ2: 履行義務の識別

契約の中に含まれる『履行義務』を判別します。履行義務とは、契約の中に含まれている「企業が実施しなければならない約束」を指します。

ステップ3: 取引価格の算定

契約に対する取引価格を算定します。一般的には、販売価格=取引価格と考えがちですが、返品やリベートといった金額を考慮して算定しなければなりません。

ステップ4: 取引価格の配分

ステップ2で判別した履行義務に取引価格を配分します。履行義務1つ1つの販売価格を基準として、按分するイメージになります。

ステップ5: 収益の認識

履行義務が充足したタイミングで売上を計上します。「履行義務の充足」とは、顧客が商品やサービスを使用することができ、使用によってその利益を受け取ることができる状態をいいます。

これだけではちょっとイメージがしづらいと思いますので、デジタルカメラを製造し、インターネットで販売する取引を例に各ステップを見ていきましょう。

ステップ1: 契約の識別

お客様がデジタルカメラを購入する意思が明確になった段階(インターネットで購入をクリックした段階)で契約は成立しますので、ステップ1は分かりやすいですね。

ステップ2: 履行義務の識別

デジタルカメラの製品そのものを引き渡す義務が、「履行義務」となりますが、忘れてはならないのが「製品保証」です。カメラ本体以外にも、1年間の保証サービスがついているのであれば、「壊れたカメラを修理する義務」も発生しますので、①製品本体と、②保証サービスの2つが履行義務になります。

ステップ3: 取引価格の算定

デジタルカメラの販売価格が10,000円であれば、10,000円を取引価格としたいところですが、返品が発生した場合、この10,000円を受け取ることができなくなります。取引価格には、このようなリスクを反映させなければなりませんので、例えば返品率が10%あるのであれば、9,000円を取引価格とする必要があります。

ステップ4: 取引価格の配分

ステップ3の9,000円を、①製品本体と、②保証サービスの2つに配分します。販売価格がそれぞれ①10,000円、②1,000円だった場合、以下のように算定します。

①本体価格=9,000×10,000÷(10,000+1,000)=8,182円

②保証サービス=9,000×1,000÷(10,000+1,000)=818円

ステップ5: 収益の認識

①と②の履行義務が充足したタイミングで売上を計上します。先ほど記載しましたが、「履行義務の充足」とは、顧客が商品やサービスを使用することができるタイミングです。①のデジタルカメラ本体であれば、お客様に届いた時点、②は1年間の保証サービスが終了した時点となります。

(②については、サービス期間中に按分して計上する方法もありますが、ここでは説明を割愛します。)

このように、5つのステップを基礎として売上計上のタイミングを考えなければなりませんので、従来のように「出荷基準」や「検収基準」といったような、シンプルな考え方から大きく変わることになるのです。

契約資産と契約負債の管理

新しい収益認識基準では、『契約資産』、『契約負債』といった用語が登場し、これらの管理が必要になります。最初に、それぞれの定義を見てみましょう。 契約資産

企業が顧客に移転した財又はサービスと交換に受け取る対価に対する企業の権利(ただし債権を除く)

(履行義務は充足したが、債権として計上できない(支払義務が発生してない)もの)

契約負債

財またはサービスを顧客に移転する企業の義務に対して、企業が顧客から対価を受け取ったもの又は対価を受け取る期限が到来しているものをいう。(=前受金のこと) これらの契約資産と契約負債ですが、履行義務と合わせて考えるとわかりやすいので、設例でご紹介します。1つの契約の中に、2つの製品(A=1,000円、B=1,000円)を引き渡すという履行義務があったとします。それぞれの製品の引き渡し日は、Aが4月1日、Bが6月1日です。 パターン1: 各製品の引き渡し時点で顧客の支払義務が確定し、4月1日に入金があった場合 4月1日 預金 2,000 / 売上 1,000 契約負債 1,000 6月1日 契約負債 1,000 / 売上 1,000 パターン2: 製品A、B両方が納品されないと顧客の支払義務が確定されず、支払期日が6月30日の場合 4月1日 契約資産 1,000 / 売上 1,000 6月1日 売掛金 2,000 / 売上 1,000 契約資産 1,000 6月30日 預金 2,000 / 売掛金 2,000 このように、契約上の支払義務の発生時期と、履行義務の充足時期のズレにより、契約資産、契約負債、売掛金、売上と管理すべき科目が変わるのです。

重要性に基づく簡便的な処理の容認

新しい収益認識基準では、重要性に応じていくつか簡便的な処理が認められています。全ての取引を原則通りの5つのステップで判断するとなると、実務負荷が非常に高まりますので、その代替措置として認められている方法を2つご紹介します。 1.出荷基準の取り扱い

基準には、 国内販売で、出荷と配送にかかる日数が通常である場合 、出荷時や着荷時に収益を認識することができると記載されています。ここで論点になるのが、『出荷と配送にかかる日数が通常である』という部分です。 出荷から 検収(又は着荷)までの日数が数日間(2~3日程度)であれば、出荷時に売上を計上しようが、着荷時に計上しようが、金額的にそれほど変わるわけではないという考えに基づいています。 2.履行義務の識別の免除

顧客との契約の観点で重要性が乏しい場合は、それぞれの約束が履行義務であるかどうかの評価をしないという選択をすることができます。例えば、製品の販売時に配送サービスも実施している場合、『配送』という履行義務も発生します。この『配送』については、履行義務を分けることなく、製品と一体にして処理することが可能です。 上記2つ以外にも、「契約変更時の対応」や、「短期間の工事契約・ソフトウェア」などといった規程も定められていますが、内容が少し複雑なので、本編での説明は割愛します。 新収益認識基準の適用における注意点

新収益認識基準は、従来の基準と考え方が全く異なります。『出荷基準』や『検収基準』といった形式ではなく、取引を5つのステップに沿って分析し、適切な方法を選択しなければなりません。特に、『履行義務』という考え方は、今までの基準には存在しませんでした。履行義務の識別や充足のタイミングについては、経理だけで判断できるものではありません。該当するサービスや製品を扱う部署と連携し、先ずはどのようになっているのか、実態を調査する必要があります。

現時点では新基準の適用まで1年ありますが、現状調査、取引内容の整理、論点整理、監査法人との折衝といった実施内容を鑑みますと、早めに着手することをお勧めします。

まとめ

■新収益認識基準の概要

新たな収益認識基準では、5つのステップ(①契約の識別、②履行義務の識別、③取引価格の算定、④取引価格の配分、⑤収益の認識)に沿って売上を計上する。

■契約資産と契約負債の管理

契約資産は、履行義務は充足したが、債権として計上できない(支払義務が発生してない)もの、契約負債は前受金のようなものを指し、双方共に管理が必要になる。

■重要性に基づく簡便的な処理の容認

一定の要件を満たすことができれば、5つのステップではなく簡便的な措置(出荷基準の容認、履行義務の識別の免除等)が認められる。

■新収益認識基準の適用における注意点

新たな収益認識基準では、取引の実態に合わせた会計処理が求められるため、取引そのものの調査が必要。また、調査結果を基に監査法人との折衝も必要となる。

いよいよカウントダウン。新収益認識基準に向けた準備を進めよう|ITトレンド

本記事では、新収益認識基準の概要や、工事進行基準への影響について解説します。

2021年4月1日以後に始まる事業年度から、新収益認識基準の適用が始まります。売上という、日々の業務で継続的に発生する行為に対して変更を迫られるため、ビジネスの現場に与える影響は決して小さくありません。新収益認識基準は複雑ですが、その概要を押さえておくことは業務を円滑化するためにも重要です。

そもそも収益認識基準とは

事業活動により、企業は売上を計上するとともに、費用を計上し、利益を得ることになります。しかし、一定の会計期間がある以上、どのような行為で売上や費用が確定し認識するのか、明確にしなければなりません。ここでは、新収益認識準について解説する前に、どのような認識基準があるのかをわかりやすく解説します。

現金主義

売上であれば現金収入があったとき、費用であれば現金支出があったときに、それぞれ収益・費用を計上する考え方です。

小売店における客商売であれば、売上の発生は現金主義でもよいかもしれません。しかし、企業間では掛け取引が一般化しているため、必ずしても現金の動きと、売上・費用の計上時期は一致しません。

このため、現金主義は会計基準で採用されなくなっています。すべての取引を現金でおこなっている、小規模事業者で採用されている考え方であるといえるでしょう。

発生主義

現金取引には関係なく、取引が発生した時点で収益や費用を計上する考え方です。たとえ掛け取引により、入金や支払いが数か月先であっても、取引が発生した時点で収益や費用を計上します。

ここでいう「発生」とは、経済価値の増減のことをいいます。価値が増加すれば収益が発生し、価値が減少すれば費用が減少したと考えるのです。この考え方にもとづき、減価償却費の会計処理は、発生主義に基づいておこなわれています。

しかし、発生主義は、客観性のない主観により計上することも可能です。このため、発生主義は、費用認識には用いられていますが、収益認識には一般的には用いられていません。

実現主義

収益を、実現の事実に基づいて計上する考え方です。製品やサービスの提供が実際におこなわれ、それを確かに受け取ったという事実にもとづき収益計上がなされます。収益については、主観ではなく客観的事実に基づいて計上されるべきという考え方が反映されたものであるといえるでしょう。

実現主義といっても、「実現」の認識基準は企業によって異なるのが実情です。一般的な販売業の場合、出荷の事実で収益認識する「出荷基準」、納品完了をもって収益認識する「納品基準」、顧客の研修をもって収益認識する「研修基準」など、企業によって「実現」の認識基準は異なります。

費用の認識は発生主義を用い、収益の認識は、より厳密な実現主義を用いることが一般的です。

新収益認識基準とは

昭和24年に制定された企業会計原則では、収益の認識基準について、以下の原則に従うことが定められています。

売上高は、実現主義の原則に従い、商品等の販売又は役務の給付によって実現したものに限る。ただし、長期の未完成請負工事等については、合理的に収益を見積り、これを当期の損益計算に計上することができる。

しかし、前述のように実現主義を採用していたとしても、企業によって認識基準は異なるのが実情でした。一方で、国際的な会計基準では、収益認識基準は明確に定められています。

このため、日本でも収益認識基準が見直され、新しい新基準が定められるようになったのです。新収益認識基準の適用時期は、2021年4月1日以後から開始される事業年度からとなります。

なお、収益認識に関する会計基準の適用指針は随時見直されており、最新版は以下のサイトより確認できます。

参考:収益認識に関する会計基準の適用指針|企業会計基準委員会

制度の概要

新収益認識基準では、いままで不明確であいまいだった認識基準を、「履行義務を充足した時に認識する」と定めました。ここでいう「履行義務」や「充足」といった用語が分かりづらいこともあり、新収益認識基準を細部まで理解することは簡単なことではありません。

まずは、収益の認識は5つのステップを踏むということを理解してください。

1.顧客との契約の識別

2.契約における履行義務を識別

3.取引価格の算定

4.履行義務に取引価格を配分

5.履行義務の充足による収益の認識

顧客との契約にもとづき、履行義務を明確化することが最初のステップです。明確化した履行義務に従って、取引価格を適切に配分し、収益を認識する流れになります。

例えば5年間の保守費用が含まれるパソコンを販売した場合、パソコンについては収益計上できますが、5年間の保守費用は履行義務を果たしていないため、収益とは認められず売上計上ができません。

適用範囲

新収益認識基準には、特段、適用会社の定めは設けられていません。実質的に、監査の対象になる大会社や、上場企業が対象になると考えてよいでしょう。

中小企業の場合は、「中小企業の会計に関する指針」などが用いられており、新収益認識基準は反映されません。しかし、任意適用は可能なので、将来の株式上場を予定する企業などは、新収益認識基準に基づく会計処理を採用してもよいでしょう。

工事進行基準への影響

ITベンダーによっては、長期間にわたりソフトウェア開発をおこなうため、早期に現金化するために、実現主義にもとづき、出来高に応じて収益認識することがありました。

しかし、新収益認識基準では、これが厳格化され、条件を満たさないと収益認識できません。場合によっては、長期にわたるソフトウェア開発などは、現金化が遅れてしまい資金繰りに窮する可能性もあるのです。

従来の工事進行基準

工事進行基準では、あらかじめ定めた条件をもとに、1年以上の長期にわたるプロジェクトを分割計上し、収益認識を分散化することができました。

一般的には、工事収益総額、工事原価総額、決算日における工事進捗度などを考慮に入れてプロジェクトの進捗度をはかり、これにもとづき収益を按分し売上計上します。

新収益認識基準における工事進行基準

新収益認識準では、工事進行基準も「履行義務を充足した時に認識する」という原則が採用されます。つまり、履行義務が充足されていない工事については、収益計上できなくなるのです。新収益認識準では、工事進行基準が以下のように明確化されることになります。

1.企業が顧客との契約における義務を履行するにつれて、顧客が便益を享受すること

2.企業が顧客との契約における義務を履行することにより、資産が生じるまたは資産の価値が増加し、当該資産が生じるまたは当該資産の価値が増加するにつれて、顧客が当該資産を支配すること

3.次の要件のいずれも満たすこと

・企業が顧客との契約における義務を履行することにより、別の用途に転用することができない資産が生じること

・企業が顧客との契約における義務の履行を完了した部分について、対価を収受する強制力のある権利を有していること

このように、新収益認識基準では、工事進行基準の進捗度の認識が厳密になり、進捗度を合理的に見積もることができる場合にしか収益認識できません。長期にわたるソフトウェア開発などのプロジェクトを分割計上して早期現金化を図るのであれば、顧客との契約時に条件を明確化し、進捗度を合理的に見積もることができるようにしなければならないのです。

原価回収基準

プロジェクトの進捗度を合理的に見積もるといっても、困難な場合もあるかもしれません。そこで、新収益認識基準で定められたのが、原価回収基準です。工事原価の発生基準によって、進捗度を算定することができるのです。

いずれの場合でも、新収益認識基準では、進捗度の算出は明確なルールのもとでおこなわなければなりません。

ITベンダーに影響が大きい新収益認識基準

新収益認識基準が与える影響は、経営者や経理担当者、法務担当者だけではありません。現場の営業が日々提出している見積もりについても、新収益認識基準にもとづいて作成しないと、分割計上ができないかもしれません。

SEやプログラマーについても、今まで以上に細かく工数計算し、プロジェクトの進捗度を算出することもが求められる可能性もあります。特に、長期にわたるプロジェクトを進めることが多いITベンダーに与える影響は決して小さくありません。

収益認識基準とは?企業に及ぼす影響は?よくわかる!収益認識基準の基本

企業経営に携わる方の中には、昨今、「収益認識基準」という会計基準ができたという話を耳にされたことがある方も多いのではないでしょうか。

この会計基準は、名前のとおり収益(売上)について定めた会計基準です。ただ、その内容は数ある会計基準の中でも、非常に読み解きにくい難解な基準となっています。

ここでは、この収益認識基準の内容を、会計専門家以外の方に「ざっくりと」理解いただくため、難解な用語はできるだけ平易な言葉に置き換えて、ポイントを絞ってご説明します。

(そのため、基準の内容について厳密な解釈等を述べているものではない点にご留意ください。また、説明をわかりやすくするために「収益」を「売上」に、「認識」を「計上」に便宜的に置き換えてご説明します)

1.収益認識基準の創設経緯と適用時期・範囲

(1)収益認識基準が創設された経緯

収益認識基準が創設されるまで、どのような経緯だったのでしょうか。

少し前まで、日本には、収益の認識に関する包括的な会計基準はなく、企業会計原則に規定される、いわゆる「実現主義」に基づいて売上計上されていました。

一方、IFRS(国際会計基準)では、収益に関する包括的な会計基準が設けられていました。

日本はこれを基にして「収益認識に関する会計基準」(収益認識基準)および「収益認識に関する会計基準の適用指針」を作成し、2018年に公表しました。

この収益認識基準は、企業会計原則よりも優先して適用されることとされています。

なお、収益認識基準には、日常的にあまり用いない難解な表現が多用されていることから、会計専門家でも理解が難しいとされています。その理由としては、IFRSの規定(の和訳)をほぼそのまま取り込んでいるためとも言われています。

(2)適用時期

2018年に公表された収益認識基準は、いつから適用なのでしょうか。収益認識基準は、2021年4月以後開始される事業年度から強制適用されることとされています。

企業によっては、それ以前の事業年度から任意適用しているところもあります。

(3)適用範囲(中小企業への適用関係)

では、この収益認識基準はすべての企業で適用が必要なのでしょうか。

実は、この収益認識基準は、上場企業などには強制的に適用されるものの、非上場の「中小企業」では適用するかどうかは「任意」とされています。

収益認識基準を正確に理解するためには、会計的知見の高い人材が必要であるため、多くの中小企業では収益認識基準を適用することは困難であり、実際に適用していない企業が多いものと思われます。

このため、親会社が上場しているなど特段の事情がない限り、中小企業では、引き続き、企業会計原則の実現主義や法人税の権利確定主義の考え方に合わせた売上計上の方法が取られていくものと思われます。

2.収益認識基準のポイント

(1)収益認識までの5つのステップ

では、収益認識基準では具体的に、どのように収益を認識するのでしょうか。

収益認識基準をごく簡単にまとめると「売上は、企業が商品(製品)やサービスを顧客に提供するという義務(履行義務)を果たし、商品等の支配が顧客に移転したときに計上する」ことになります。

もう少し具体的に説明すると、基準では売上の計上までに次の「5つのステップ」を踏む必要があるとしています。

この「5つのステップ」では、さまざまなところで「見積もり」や「判断」が求められます。

収益認識基準が難しいと言われるのは、基準の表現が難解であることのほか、高度な会計的知見に基づく見積もりや判断が要求されるためとも言えるでしょう。

各ステップの概要を以下にご説明します。

1.契約の識別

収益認識基準においても、売上を計上する際の基になるのは「顧客との契約」です。

“顧客”との契約に該当するかは、通常の営業活動によるものかという視点で判断します。

その上で基準では、売上計上までのはじめのステップとして、契約の単位を「識別する」ことを求めています。「識別する」をわかりやすく言うと「見分ける」ということです。

売上計上の基になる契約とは「当事者間で法的な強制力のある権利・義務を生じさせる取り決め」のことであり、書面に限らず口頭や取引慣行によっても成立することがあります。

ビジネスにおける顧客との契約は、基本的には、基準における「顧客との契約」に該当すると考えてよいでしょう。

ただし、寄附や贈与といった経済合理性のない取引や明らかに対価を回収できる可能性が乏しい取引などは除外します。

また、同一の顧客とほぼ同時に締結した契約で、取引の実態から一つの契約と考えられるような場合は、複数の契約を一つにまとめるといったことを行う必要があります。

2.履行義務の識別

「契約の識別」の次のステップは「履行義務の識別」です。収益認識基準には「履行義務」という言葉が何度も出てきます。

「履行義務」の考え方はやや難解ですが、企業が「商品(製品)やサービスを顧客に提供する義務」と考えて、特に問題はないでしょう。

さらにざっくりと、かみ砕いで捉えると「履行義務」は、企業が「顧客に対してやるべきこと」とも言えます。

つまり「履行義務の識別」とは、顧客に対してやるべきことを見分けることです。

一般的に、企業が顧客に対してやるべきことは契約で定められています。そして、契約には、顧客に対してやるべきことが複数定められていることがあります。

このような場合には、それぞれ別の履行義務として考える必要があります。

たとえば、製品を販売する際の契約書に、その後、一定期間の保守サービスの提供についても定められていた場合を考えてみます。

このとき、製品の引き渡しと、その後一定期間の保守サービスの提供は、別々の履行義務(顧客に対してやるべきこと)と判断することになります。

3.取引価格の算定

「履行義務の識別」の次のステップは、「取引価格の算定」です。このステップで、売上計上する“金額”である「取引価格」を算定します。

取引価格は、通常は契約書に記載されている契約金額です。ただし、収益認識基準では、必ずしも契約金額が取引価格とはならない場合があります。

たとえば、商品の仲介など「代理人」として取引していると認められる場合を考えてみます。

このとき、取引価格(=売上金額)は、契約書に記載されている、商品の引き取り代金(グロスの金額)ではなく、仲介手数料相当額(ネットの金額)となります。

また、値引きやリベートなど、契約金額が変動する可能性のある取引などについても、契約金額に一定の調整を加えた金額を取引価格とする必要があります。

4.取引価格の履行義務への配分

「取引価格の算定」の次のステップは、「取引価格の履行義務への配分」です。

「取引価格の履行義務への配分」とは、契約に複数の履行義務(顧客に対してやるべきこと)が含まれている場合、算定した取引価格(売上金額)を、個々の顧客に対してやるべきことへ配分するということです。

このとき、何を基準に配分していくかというと、個々の顧客に対してやるべきことの「独立販売価格」を基準にして配分します。

「独立販売価格」とは、商品(製品)やサービスを第三者の顧客に提供する際の価格のことです。標準的な販売価格と考えればよいでしょう。

たとえば、製品を販売した際の契約書に、その後、一定期間の保守サービスの提供が定められている場合を例に考えてみます。

【例】

・契約書の契約金額(=取引価格):10,000千円

・製品の独立販売価格:8,800千円

・保守サービスの独立販売価格:2,200千円

上記例で、製品の独立販売価格と保守サービスの独立販売価格を合算すると、契約金額を上回ります。個々に設定された価格よりもトータルの金額が割安に設定されていることは比較的、一般的なことと思われます。

上記例で「取引価格の履行義務への配分」を考えると以下のようになります。

・製品の引き渡しという履行義務への取引価格の配分:

10,000千円×8,800千円÷(8,800千円+2,200千円)=8,000千円

・一定期間の保守サービスの提供という履行義務への取引価格の配分:

10,000千円×2,200千円÷(8,800千円+2,200千円)=2,000千円

5. 履行義務の充足に応じて収益を認識

「取引価格の履行義務への配分」後の最後のステップで、ようやく売上の計上に至ります。

具体的には、個々の履行義務(顧客に対してやるべきこと)が遂行された項目について、売上を計上していきます。

前項の例で言うと、製品を顧客に引き渡し、顧客に支配が移転した時点で、8,000千円を売上として計上します。

一方、保守サービスの方は、製品の引き渡しと同時に売上計上することはできません。

保守サービスの保守期間が2年間であるとすると、保守サービス開始後、年間1,000千円を月割りで売上計上していくことになります。

(2)代替的な取扱いを確認する

ここまでご説明した、収益認識基準の売上計上までの5つのステップについて、どう感じられたでしょうか。なかなかにハードルが高いと思われた方も多いのではないでしょうか。

事業内容や企業規模などにもよりますが、収益認識基準を厳密に適用しようとすると、企業にはかなりの負担がかかってきます。

このような点に配慮し、基準では一定の場合に「重要性等に関する代替的な取扱い」を認めることとしています。

代替的な取扱いを用いることができる場合には、企業はこれまで通りの売上の計上方法を用いることができます。

代替的な取扱いは全部で8つ定められています。

収益認識基準を適用する場合には、自社において適用できる代替的な取扱いがないか調べてみることが、実務負担を軽減させるうえで有用と言えるでしょう。

(3)法人税・消費税との関係は?消費税については「税抜経理」のみ

参考までに、収益認識基準と税務(法人税と消費税)との関係を簡単に整理しておきます。

まず、法人税についてですが、法人税は通達の改正により、収益認識基準の内容を概ね取り込んでいると言えます。

このため、例外は複数ありますが、収益認識基準を適用している会社が、税務申告の際に膨大な税務調整を強いられるといったことは、相当程度回避されたといえます。

また、消費税については、「税抜経理」と「税込経理」の2つの会計処理方法のうち、収益認識基準では、税抜経理のみが認められています。

3.収益認識基準が企業に与える影響は?

では、収益認識基準の適用は、企業にどのような影響を与えるのでしょうか。特定の業種に与える影響について若干の考察をしていきます。

(1)卸売業への影響は?売上金額が変わる?

収益認識基準は、卸売業者の売上金額に影響を与える可能性があります。

収益認識基準導入以前は、卸売業者が商品を仕入れて販売する場合、売上と売上原価が両建てされるのが一般的でした。

たとえば、1,000円で仕入れたものを1,200円で販売すれば、売上が1,200円、売上原価が1,000円、売上総利益(粗利益)200円といった具合です。

ところが、収益認識基準導入後は、このような取引のうち一定のものは「代理人取引」と判断される可能性があります。

本人ではなく、代理人としての取引とみなされてしまうと、取引金額のうち手数料部分のみが売上の金額となってしまいます。

上記の例で言えば、粗利部分の200円が売上となるということです。売上原価がないため、売上総利益の額は同じです。

売上 1,200円 売上原価 1,000円 売上総利益 200円 → 売上=売上総利益 200円

このように、損益計算書のトップラインである売上の金額に大きな変動を及ぼす可能性があるため、卸売業者においては、顧客との取引の中に、代理人取引に該当するものがないか注意を払う必要があります。なお、利益には影響はありません。

代理人取引に該当するか否かの判定は、以下のような観点を基に総合的に判断します。

【本人か代理人かの判断のポイント】

・顧客への約束を果たすために、企業が主たる責任を負っているか。

・商品の販売などにつき、企業が在庫リスクを負っているか。

・販売価格の設定について、裁量権を有しているか。

該当する可能性がある場合には、会計の専門家によく相談する必要があるでしょう。

(2)小売業への影響は?「消化仕入れ」はどうなる?

小売業においても、卸売業と同様に代理人取引に該当するか否かの論点が出てきます。

具体的には、百貨店などで行われている、いわゆる「消化仕入れ」の取引などは代理人取引とされ、売上金額が手数料相当額となってしまう可能性があります。

消化仕入れとは、店内に陳列している商品について、販売と同時に仕入れを認識する取引のことです。

この取引では、商品の在庫リスクを百貨店などが負うことはないため、収益認識基準の基では代理人取引と判定される可能性があります。

(3)建設業への影響は?「工事進行基準」、「工事完成基準」はどうなる?

建設業への影響はどんなことがあるでしょうか。

収益認識基準が創設される以前は、建設業者が請け負う工事契約の特殊性に合わせた収益認識を行うため、建設業や一定の製造業などにのみ適用される「工事会計基準」という独立した会計基準がありました。

しかし、業種を問わず適用される収益認識基準が創設されたことに伴い、工事会計基準は現在では廃止されています。

建設業における売上計上の方法として、実務上も定着していた「工事進行基準」と「工事完成基準」という概念は、収益認識基準にはありません。

ただし、工事進行基準と工事完成基準による売上計上の考え方は、適用要件や進捗度の見積もり方法などに違いはあるものの、概ね似た考え方が収益認識基準にも存在します。

また、期間がごく短い工事契約について工事完成基準に相当する売上計上を認めるなどの代替的な取扱いも認められています。

このため、例外はあるものの、収益認識基準が建設業者に与える影響は、一般的にそこまで大きくはないと考えられます。

また、法人税法における工事進行基準や工事完成基準の規定は、現在も引き続き存在しています。

なお、収益認識基準の適用が求められる上場企業などにおいては、卸売業、小売業、建設業に限らず、すべての業種で影響があると考えられます。

そのため、自社の取引内容をよく見直し、想定される影響について十分な検討が必要となるでしょう。

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